海外教育事情|スウェーデン





スウェーデン便り  小国さやか


教育制度の特徴

スウェーデンでは、小学校から大学まで入学金や授業料は無料です。
義務教育は1年生から9年生までとなっています。また、小、中、高校では給食費も無料となっています。

幼稚園の最終年の年長組が、いわゆる小学校0年生として、小学校への準備期間として位置づけられており、穏やかに始められるように配慮されているようで、新たな環境への対応力を付けさせているように思われます。

学校生活は自由で、髪形や服装はそれぞれ個性的です。

日本の公教育と比較

日本と比べると勉強の時間数が少ないようです。できなければいけないことが、文化の違いからでしょうか、少ないように思います。

また、日本では先生が一方的にお話する授業が多いのですが、こちらの小学生は興味が湧くような色とりどりの教科書兼ワークブックで、それぞれのペースで自習をしていることが多いようです。

ただ、最終的に習得できなければならない項目はあり、時々チェックされますが、それ以上になるのは全く個人の能力ややる気により自由といったかんじです。

教室の雰囲気も大きく違います。教員と生徒はお互い、名前で呼び合っています。ヘイ、アンナ!ヘイ、ルーカ!というように。男女間はもちろんのこと、平等であるということは大変重要なことのようです。


社会教育制度の柔軟性

どんなに年齢を重ねていても、国からお金を借りて大学やその他の学校で勉強することは自由なのです。

また、外国人でも、申し込んで受け入れてもらえれば同じ条件で勉強できます。

外国人が職を得ようとするならば、スウェーデン語はできたほうがよいように思います。私が留学する場合でも、日本の大学在学中に人民高等学校(ヨンショピン市にあるSodravatterbyggdens Folkhogskola)の校長先生あてに自己紹介文を書き入学希望の旨を伝えると、そのまま入学が認められました。

その時、簡単に入れるものだなあと思ったものです。1994年のことですから今どうなっているかはわかりませんが、学校に問い合わせたりすることは難しことではなく、当然のこととして割と親切に助けてくれることが多いと思います。

人々の意識も、国も、大らかで人間らしいというのか、官僚的ではなく、素朴でざっくばらんな気質があるという気がします。

留学制度

スウェーデンの国民高等学校(Grimslovs Folkhogskola)で音楽と手工芸を勉強しました。

その他、高校の単位を取るための社会人のための高校でスウェーデン語を習ったり、大学のコースでは、スウェーデン語と心理学を勉強したり、また仕事を得るための基礎的な単位を取得しました。

なお、スウェーデンでは1年以内の留学生は社会保障を得られませんので、事前に日本で対策が必要かと思います。

教職

私は、スウェーデンの高等学校(Furulundsskolan)で2年間日本語を教えました。その後、スモーランド地方ヨンショピン県内にある小さな町の小学校で半年、その後幼稚園で1年働き、現在に至ります。

高校の就職に際しては、職安のサイトで情報を見つけて履歴書と自己アピール文を添えて提出するといったことを行ってきました。最終的には、インタビューの結果で選ぶように思われました。

小学校での就職では、自治体のホームページで求職情報を得、申し込みましたら、インタビューを受けさせていただき、採用されました。

小学校では担任の補佐のような仕事があり、それで2年生と1年生の混合クラスで働いていました。自習という形態が多いこともあり机の間で見まわりながら教えたり注意したりする教員が必要なのです。

また、幼稚園では1歳から就学前の6歳まで両親の必要に応じてそれぞれ入園してきます。私が働いていた幼稚園では、どんな天気でも必ず外に出して遊ばせていたことをよく覚えています。雨でも雪でも風でもとにかく外遊びです。マイナス10℃以下にならない限り、外でも昼寝させます。日本だったら驚かれることでしょうね。

新鮮な空気と自然の移り変わりが体と心に良い刺激を与えると信じられているようです。


語学教育

スウェーデンにおける語学教育ですが、英語に関しては、小学1、2年生のころから遊び歌や数字、色を覚えることなどが組み込まれています。小学4年生から本格的に英語が始まります。

一方で、スウェーデンのテレビ番組は、英語で放映されているものが多いため、それらは吹き替えではありません。したがって、英語は、日常的に耳に馴染んでいる言葉のようです。その意味で、英語が標準的に通じる国と言えそうです。

その後、中学生、高校生になると第二外国語を選ぶようになります。ただし、ある程度の履修希望者が集まらないとクラス編成になりにくと思われます。

私は、クラスを持つことができましたが、おそらく中規模の田舎都市では、生徒たちの日本語に対する熱意がないとクラスをもつことは難しいでしょう。そのため高校側は日本人教師をなかなか雇いません。

日本語教師

私は教員養成課程を卒業して日本語の読み書きができる、という理由で採用されました。

そもそも日本語教師を目指した理由とは、日本語教員の仕事があったからという単純な理由ですが、小さなことからでもスウェーデンと日本の橋渡し的な役割を担いたかったという希望はずっとありました。

日本語を教える際には、特別、指導要綱や条件や制限などといったものはなく、日本語教師のサイトを活用して自分でこのようにしてみようかなと試しながら教えていたという感じです。

それでも生徒たちが、少しずつでも理解し上達するのはみていてうれしかったですし、母国の文化に興味を持ってくれているというのがうれしかったです。

言葉だけではなく文化的な意味も含め、スウェーデン語と日本語の違いを分かってもらおうと考えていました。

日本語の教室

私が勤めていたのはソルベスボリという港町の高校で、日本語を習いたい生徒たちがたくさんいたのです。彼らは、日本のマンガやアニメ、ゲームを通して日本語に興味を持っている生徒が多かったようです。

授業では、文法やひらがなカタカナの書き方といった難しいものより、日常会話やスラングの意味を教えて欲しいという感じでした。私は、その都度教えるようにしていました。

時々、英語字幕の日本映画などを見せましたが、笑いの場面が私とは違いましたね。

日本語

日本語は大変奥ゆかしく最後まで聞かないと意味がよくわからなかったり、主語が省かれていたり、述語部分を言わずに済ませることができ日本人の私からすると便利なところもあります。

日本語だと言えるけれどスウェーデン語で難しかったりということもありますが、逆も生じます。現在、子どもたちといっしょに日本語で話そうと努めていますが、自分が子どもだった頃には聞かされていなかったような愛情表現があり、それを身につけようとと思うと難しいです。別の人格になったような気さえします。両者のバランスを取っていくことが今の課題ですね。

育児制度

障害児教育に対する制度が充実していると思います。たとえば、現在、私が住んでいる自治体では特別支援学校などが全くなく、どのような障害を持っていてもアシスタントが四六時中世話をしながら、時には他の教室を利用しながら一緒に勉強しています。

重度の障害をもった子ども多いのですが、この制度はなかなかすごいなと思いました。自治体の経費上の理由もあるとは思いますが、障害のある子どもと健常の子どもという区別が、子供たちにどういう影響を及ぼすのか、について考えさせてくれます。

他方、以前住んでいた地域では特別支援学校があり、困難があると親に選択させて簡単に学校を移れることになっていました。

また、スウェーデンの小学校では授業時間が少ないということに驚きます。時間割をみるとほんとにこれで大丈夫なのかと不安になるくらいです。

授業ではよく森やプールに時間が割かれます。遊びの時間で映画を見たりするのが、たとえば4年生の娘のクラスではタイタニックをみたそうですが、私からするとなんの勉強になっているのか疑問です。日本人の私は意味があるかないかという、ある意味何もかも損得勘定でみてしまう傾向があります。

2年生の息子の時間割では隔週の水曜日は午前中全部森行きです。毎週月曜日午前中全部プールです。遊びではないのですが、泳げるようになるということがとても大切なことのようです。200メートル足を着かずに泳ぐことができなければ3年生になっても続けていかなければいけません。







小国さやか
Oguni Sayaka

職業肩書(翻訳者等);音楽家、翻訳者
1974生年、香川県出身、現在、スウェーデン ヨンショピン県に在住。
香川大学教育学部卒
使用言語;日本語、スウェーデン語
スウェーデンの高校日本語教員、小学校教員、幼稚園教員を経て、フリーの翻訳者